序章

2017/11/29 公開


 風が啼いている。

 大地は荒れ果て、先に進むにも道はとうの昔に埋もれてしまったのか、見渡す限りの途方もない地が視界が広がっている。

 難なく進めれば何も問題がない旅ではあったのだが、こうも行く先に何もないものだと、どこからともなく途方もない不安が押し寄せてくる。不安を紛らわすようにどこでどう啼くことができるものかと空を見上げても何一つ影のない世界が広がっていて、青い海と薄土の海は砂もの小さな空間に独り取り残された気がする。

 聞こえるものは何もなく、見えるものもなにもない。自分がどこに向かい、どこにたどり着くかも分からず、只唯、足が進む方向に進んでいく。もしかしたら来た道を帰ってるのかもしれない。もしかしたら同じ場所をぐるぐるとまわり続けているのかもしれない。大地に目印など存在せず、頭上はるか上に存在する、行ったこともどんなところかもわからない惑星に自分が救われているんだと噛み締める。

  幾時間歩いた時、小さく地の海の中に光るものがあった。この地で光るものと言えば、かつてはあったはずの文明の成れの果てか海に溺れた亡骸か。どちらにせよ何かを得ることは可能であろう。私は行く先を決めた。